生物部 「メンバー」が語る」

2010/10/26 UME

『小さな動物たち』

たくさんいるのに、みんな知らない・・・

meio fig.
図:色々なメイオベントス 〔バーは100μm(=1mmの10分の1)〕

  これらはみな、海の砂の中にすむ体長1mmにも満たない小さな動物で、メイオベントス※1)と呼ばれています。浅い海では1uあたり100万〜1000万個体も生息しているそうですが、肉眼で見ることが困難な上、図鑑などにもあまり出ていない※2)ので、その存在を知っている人は少ないでしょう。
  驚くことにメイオベントスには、実に多くの「門」が含まれています。「門」とは生物を分類する非常に大きな単位です。私たち人間は脊索動物門に分類されていますが、犬・鳥・魚・カエルも私たちと同じ「門」の仲間です。身近な動物で他の「門」といえば、節足動物門(昆虫)や軟体動物門(カタツムリ)くらいでしょうか。磯を頑張って探せば刺胞動物門(イソギンチャク)、棘皮動物門(ヒトデ)、環形動物門(ゴカイ)に出会えるかもしれません。
  ところが海の砂には、ほんの一すくいの中にも10の門の動物がいる、という報告があります。現在、動物はおよそ35の門に分類されていますが、海の砂の中からは20以上の動物門が発見されています。(上図の動物は左から腹毛動物門緩歩動物門動吻動物門胴甲動物門
  前述のとおり、「門」は非常に大きな分け方ですから、既知のどの生物とも違う新しい「門」の発見というのは、とても珍しいことです。にもかかわらず、20世紀以降に発見された新しい「門」の多くはメイオベントスでした。これはメイオベントスの研究が遅れているため、未知の動物がたくさんいるからです。今後、新しい「門」が発見される可能性もまだまだあります。逆に、知られないまま絶滅する種類もいるかもしれません。この分野の研究がもっと進み、一般にも広く認識され、大切にされることを私は望みます。
  上図のように、メイオベントスは小さいながら非常に複雑でユニークな形をしています。アートのモチーフとして、とても魅力ある素材だとは思いませんか?私は生物部の活動を通して、メイオベントスの素晴らしい世界をアピールしていきたいと思います。   

※1) 1mmのフルイを通過して32um前後の細かいフルイに捉えられる底生動物
※2) 小学館の図鑑NEO「水の生物」は子供向けですが写真付きで結構詳しく出ています。大人向けでもフィールド図鑑などには出ていません。肉眼では見えないから!

【参考文献】
・図は"Introduction to the Study of Meiofauna" 他より
・「砂のすきまの生きものたち 間隙生物学入門」伊藤立則、海鳴社、1985(絶版)
・「未知種の宝庫 メイオベントスの世界」白山義久、日本分類学会連合ニュースレターNo.3、2003

 

 

 

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